読売新聞7月3日の朝刊です。

ホンジュラス ルポ 「テグシガルパ=小寺以作」
大統領の左派化警戒 クーデターには反発
国民「どちらも不支持」



 大統領のセラヤ氏がクーデターで国外追放された中米ホンジュラスの首都テグシガルパに1日、入った。一部で
軍の姿も目に付くが、市内の多くの地域は平穏な雰囲気だ。ただ、週末にもセラヤ氏の帰国が予定されており、
事態が緊迫化する懸念が強まっている。



首都は平静
 「クーデター一派は去れ!」―――。首都中心部では1日、セラヤ氏の支持者1000人以上が横断幕を手に、
大通りを練り歩いた。大統領の官邸周辺は道路が封鎖され、銃を下げた兵士30人が一列に並び、周囲ににらみを
きかせていた。
 だが、官邸から1キロほど歩くと、道ばたで洋服や雑貨を売る商人の姿が見られるなど、日常的な光景が広がって
いる。男性の店主にクーデターの話を振ると、「どちらも支持しない」と冷めた答えが返ってきた。
 セラヤ氏は最低賃金を約7割も引き上げ、母子家庭に生活支援を行うなど弱者対策に力を入れ、国民の6割以上と
される貧困層から一定の評価を得ている。
 一方で、大統領の再選を禁じる憲法を強引に改正して再選を試みるなど、強権的な姿勢は国民や政界の一部から
反感を買った。
 反米左派のチャベスベネズエラ大統領に急接近して、安価な原油や融資を獲得した反面、チャベス氏のように
社会主義化に走るのではないかとの懸念が親米国ホンジュラスの国民の間に拡大し、支持離れを招いている。
 国民はクーデターに加担した暫定政権に対しても、「民主主義の手法に反する」との反発が根強く、双方への
不信に駆られている状況だ。



帰国問題
 米州機構(OAS)のインスルサ事務総長は1日、「軍事クーデターは容認できない」と述べ、暫定政権に対して、
72時間以内にセラヤ氏の復権を認めるよう要求した。セラヤ氏は暫定政権の対応を見極めるため、2日に予定して
いた帰国日を、OASの猶予期限が切れる4日以降に延期した。
 セラヤ氏はすでに再選の意思がないことをあきらかにし、帰国の目的は「大統領の任期を全うするため」だと
主張している。
 これに対し、暫定政権側は、国家反逆罪や職権乱用罪など18の容疑を挙げ、帰国直後にセラヤ氏を逮捕する
構えだ。実際に裁判にかけられれば刑は禁固20年以上に及ぶとの見方もある。
 暫定政権の強行的な動きをけん制するため、帰国の際はインスルサOAS事務総長や、アルゼンチンのフェルナン
デス大統領も同行し、セラヤ氏の支持者は空港での出迎えを計画している。帰国や逮捕を機に両派の抗議活動や
軍の動きが活発化し、国内が混乱する恐れが強まっている。



孤立
 国際社会は暫定政権を厳しく非難しており、1日には中南米の左派政権に続いて、仏、伊、スペインも駐ホンジュ
ラス大使を召還すると発表した。
 米国も1日、ホンジュラスとの合同軍事演習を凍結することを明らかにし、オバマ政権は、経済制裁も検討する。
世界銀行ホンジュラスへの約2億7000万ドルの融資を凍結する方針だ。セラヤ氏逮捕を強行すれば、暫定政権は
国際社会からの孤立を深め、経済的に大きな打撃を受ける可能性が高い。
 同国の有力紙トリブナのオルマン・マンサノ編集長は「暫定政権は、11月に行われる大統領選まで政権を維持
して孤立に耐えるか、国際社会の批判を意識して選挙の前倒しに踏み切るか、二者択一を迫られる」と見る。
ミチェレッティ暫定大統領は現時点で妥協の姿勢を見せておらず、ホンジュラスは混迷の度を強めそうだ。







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