ホンジュラス クーデター 各紙の朝刊記事です。

産経新聞「ニューヨーク=松尾理也」
ホンジュラス クーデター非難声明 
中米ホンジュラスで28日、クーデターが起き、セラヤ大統領=写真=が軍によって身柄をコスタリカに移され、
後任としてミチェレッティ国会議長が暫定大統領への就任を宣誓した。クーデターに対し米国が非難声明を出し
たほか、米州機構(OAS)も緊急会合を開いてセラヤ氏の復帰を求める決議を採択するなど国際的な非難が高まっ
ている。
現地からの報道によると、セラヤ大統領はパジャマ姿のままコスタリカに運ばれ、その後ホンジュラス議会が
辞表とされる書類を受理した。しかし、同大統領は、辞表は偽物だとした上で「私こそがホンジュラス大統領だ」
とクーデターを非難。復帰を求める姿勢を明確にした。
これを受け、中南米の左派陣営としてセラヤ大統領と同盟関係にあるベネズエラチャベス大統領が、同国軍に
警戒態勢を取るよう命じるなど、地域に緊張が高まっている。セラヤ氏は28日夜、ニカラグアに向け出発。同地
で29日開かれる中南米首脳らとの会談で、自らの正当性と支持を訴える意向だ。
セラヤ氏は裁判所や議会からの反対を押し切って、大統領再選を禁じる憲法の改正を視野に入れた非公式な国民
投票を、28日に強行しようとしていた。
ホンジュラス最高裁はこの日、「法の支配の堅持」などを理由に軍部へ大統領の拘束・追放を命じたとの声明を
発表。当局は夜間外出禁止令を発令し、事態の押さえ込みを図っている。



米、平和解決へ試金石
ホンジュラスで起きたセラヤ大統領の国外追放劇は、予期しない光景をも生み出した。オバマ米大統領と、反米
強硬派で鳴らすベネズエラチャベス大統領が、クーデター非難で声をそろえたのだ。中米では冷戦後初めてと
なる今回のクーデターは、オバマ米政権誕生を触媒にした急激なラテンアメリカ政治の構造変化も浮き彫りにして
いる。



「深く憂慮」
「深く憂慮している」。対話による平和的な解決を呼びかける声明を即日発表するなど、オバマ大統領の対応は
素早かった。米国務省高官は「セラヤ氏が唯一の正当な大統領だ」と述べるなど、米国の求める問題解決の道は
セラヤ氏復帰であることを明言した。
もともとは中道左派として大統領に当選したセラヤ氏は、2006年1月の就任後、急激に左寄りにかじを切り、
ベネズエラキューバが主導する中南米の反米左派陣営の一角を占めるようになった。
セラヤ氏は今年3月、憲法の大統領再選禁止規定を改正する考えを表明。ベネズエラチャベス氏をはじめ、
ボリビアエクアドルといった反米左派諸国の指導者がここ数年歩んできた権力強化の道筋と一緒だった。
米国が今回のクーデターに肯定的な見方を示してもおかしくはなかった。事実、2002年にベネズエラでクーデター
が発生し、一時的にチャベス氏が失脚した際、当時のブッシュ政権は事態への米国の関与は否定したものの、
政権交代は歓迎する姿勢を示したことがある。



写真:28日、ホンジュラスの首都テグシガルパの大統領官邸前につめかけたセラヤ大統領の支持者(ロイター)



過去と決別?
こうした歴史を踏まえ、チャベス氏はクーデターを非難し、セラヤ氏の復職を求める一方、米国非難という得意
の図式も持ち出し、「事態への米国の関与を調査すべきだ」と述べた。
しかし、米国の姿勢は、11月の次期大統領選の実施を強調するなど政権獲得の既成事実化を進めるミチェレッティ
暫定大統領に対し、米国務省高官が「クーデターは成功しないだろう」と示唆するなど、ベネズエラの批判が的外
れとなるほど明確だ。さらに、米州機構(OAS)を通じた多国間外交を解決に向けた圧力の主軸に据えるなど、オバマ
流は徹底している。
今回のクーデターについて、オバマ氏が提唱する新たな中南米外交の真価を問う試金石になるとの見方も出ている。ロイター通信は「米国が、たとえ気にくわない人物であろうと、民主的に選ばれた指導者を尊重するという
ならば、過去との明確な決別となる」と分析している。(ニューヨーク 松尾理也)



読売新聞
中南米諸国 政変を非難 ホンジュラス暫定大統領の孤立不可避
リオデジャネイロ=小寺以作]
 中米ホンジュラスで28日、軍がセラヤ大統領を追放したクーデターについて、中南米諸国は一斉に非難する
立場を打ち出し、暫定大統領に就任したミチェレッティ国会議長は国際的な孤立が避けられなくなった。
クーデターは、急速に左傾化するセラヤ政権の打倒に向け、同国の司法、国会、軍が連携して行った可能性が
濃厚だ。
 ホンジュラスは伝統的に親米国だが、セラヤ氏は昨年以降、ベネズエラチャベス大統領ら中南米の左派政権
に急接近してきた。背景には、産油国ベネズエラの支援を得て、国内の貧困対策を手厚くし、自身の支持基盤を
強化する狙いがあったとみられる。
 その結果、セラヤ氏は、貧困層労働組合に支持を広げたが、政財界や軍では反発が強まった。24日には、
続投を狙ってセラヤ氏が計画した国民投票に対し、協力拒否を表明したバスケス参謀長が解任された。これに
抗議して、陸海軍の幹部が相次いで辞任。国会でもセラヤ氏が率いる自由党を含めた与野党から、強引な改憲
手続き批判が集中していた。
 国民投票は、セラヤ氏が最高裁違憲判断を無視して強行しようとしたもので、ルビ司法長官は25日、国会に
セラヤ氏の罷免を要求していた。最高裁は28日、「作戦は、(最高裁が)法の支配を取り戻すために軍に命じた
ものだ」と認め、クーデターを擁護した。AP通信によると、セラヤ氏の支持者100人以上が大統領官邸や国会
付近で「裏切り者」「ブルジョアを追い出せ」などと叫び、抗議デモを行った。
 改憲によって大統領の任期を延長する手法は、チャベス大統領やボリビアのモラレス大統領ら、反米左派の
指導者が、相次いで行ってきたものだ。
 チャベス大統領は28日、テレビ演説で「セラヤ氏復権のため、あらゆる手段を使う」と宣言。同日、キューバ
ホンジュラスなど9か国で作る社会・経済協定「ボリバル代替統合構想(ALBA)」はセラヤ氏を招いてニカラグア
緊急首脳会議を開き、ホンジュラス国民に「クーデター政権」に対する抵抗を呼びかけ、セラヤ氏支持の立場を
明白にした。米州機構(OAS)も同日、ワシントンで行った緊急会合で、セラヤ氏の無条件復帰を求める決議を採択
した。



米大統領「懸念」
「ワシントン=本間圭一オバマ米大統領は28日、ホンジュラスのセラヤ大統領が同国軍に拘束されたことに
ついて、「深く懸念している」とする声明を発表した。声明は、「外部からの干渉を受けず、対話を通じて
平和的に解決すべきだ」として、軍による強硬手段を批判した。また、国務省当局者も同日、記者団に対し、
「我々はセラヤ大統領以外は認めない」と言明した。



毎日新聞
追放の大統領 中米首脳会議出席へ ホンジュラス 参加国は復職支持
[メキシコ市・庭田学]クーデターで国外追放された中米ホンジュラスの左派、セラヤ大統領は28日夜、軍に
強制移送されたコスタリカからニカラグアに到着した。AP通信などが伝えた。
 セラヤ氏はニカラグアで29日開幕する中米統合機構(SICA・7カ国)の首脳会議に出席する予定。参加各国は
セラヤ氏の帰国・復職を後押しする見通しだ。
 一方、ベネズエラなど急進左派国を中心とする「米州ボリバル代替統合構想(ALBA)」は、加盟国ホンジュラス
の問題を協議するため緊急会合をニカラグアに招集。セラヤ氏は28日夜、ニカラグアベネズエラエクアドル
のALBA左派首脳らと会談した。
 コスタリカのアリアス大統領は28日、同国に強制移送されたセラヤ氏とともに記者会見し「セラヤ大統領と
一緒に中米統合機構首脳会議に出席する」と同氏支持を早々に打ち出す一方、中南米カリブ海の国際組織
「リオグループ」の首脳会議参加を呼びかけた。
 ホンジュラスでは28日、ミチェレッティ国会議長が暫定大統領に指名され、就任式を行ったが、米国や中南米
諸国はセラヤ氏が正統大統領であるとして、暫定政権を承認していない。
 これに対し、ミチェレッティ氏は「セラヤ氏は憲法違反を犯した」などとして、軍の行動を「クーデターでは
ない」と正当化。暫定大統領就任についても「合憲であり、90%の国民が満足している」と語った。外相を任命
するなど組閣に着手している。
 暫定政権は28日夜から48時間の夜間外出禁止令を発令。一方、セラヤ支持者は29日からセラヤ氏復帰を要求
してゼネストを計画している。



日経新聞
ホンジュラス クーデター 中南米諸国が緊急会議
サンパウロ=檀上誠」中米ホンジュラスでセラヤ大統領が国外追放されるクーデターが発生したことを受け、
中南米カリブ海の9カ国でつくる米州ボリバル代替統合構想(ALBA)は28日夜(日本時間29日午後)、ニカラグア
の首都マナグアで緊急首脳会議を開いた。
 会議では「クーデターを起こした者たちは、国民を裏切ったことで裁かれるべきだ」(エクアドルのコレア
大統領)と、クーデターを非難する発言が相次いだ。セラヤ氏も出席し参加者に謝意を伝えた。29日も引き続き
会合を開く。
 ALBAはベネズエラが主導し、急進左派政権を中心に構成。今回のクーデターは、セラヤ政権によるALBA参加
など、ベネズエラとの関係強化に対する反発が背景にあるとされる。






人気ブログ・ランキングへ