ボルト 200も世界新
読売新聞夕刊一面記事です。
19秒19 世界陸上
[ベルリン=近藤雄二]
陸上競技の世界選手権第6日は20日、ベルリンで行われ、男子200?決勝で、ウサイン・ボルト(22)(ジャマイカ)
が19秒19の世界新記録で優勝した。従来の記録は、ボルト自身が昨年の同じ日に北京五輪でマークした19秒30で、
一気に0秒11更新した。ボルトは北京五輪で100?、200?、400?リレーで、すべて世界新での3冠を達成。この
大会でも100?と200?を世界新で制し、22日の400?リレーで偉業に挑む。
向かい風0.3?。スタートから飛び出したボルトは、大きなストライドで一歩ごとにリードを広げ、2位に
0秒62の大差をつけて圧勝した。史上初めて5人が20秒を切る高速レースだった。
「すべてが可能」
歯をむき出しにして、必死の形相で駆ける。ゴールすると、肩で息をして大の字に倒れ込んだ。「本当に
疲れた。今日はぐっすり眠れそうだよ」。まさに渾身の力で、ボルトは「19秒1台」の世界にたどりついた。
「生きる伝説になりたい」と公言する22歳は、パフォーマンスも派手だ。名前のアナウンスと同時に、満員の
スタンドから上がった歓声に、ちょっぴり不満そうな顔をした。「もっと盛り上がれ」と両手でさらに大きな
声援をあおり、熱狂に浸った。「僕にとっては陸上がすべて。パフォーマンスは、陸上とファンに対する愛情
の表れなんだ」。
ショーを演出しながらも、自らの集中は切らさない。スタートの反応速度は0秒133で8人中トップ。1?96の
大きな体、広いストライドでぐんぐん加速し、50?から150?までの100?を8秒84、時速40?で疾走する。
ゴール脇の電光掲示板で世界新を確かめ、右手で胸をたたいて快挙を誇った。
会場となった五輪スタジアムのトラックは表面が軟らかで、記録を狙うには不向きと言われていた。しかも
6日間で8レース目と披露のピークにあり、0.3秒の向かい風。だが、どんな悪条件も今のボルトには無関係だ。
北京五輪に続く世界新での2冠達成で、100?では9秒58をマークし、200?では19秒19。いずれも自らの記録を
0秒11も塗り替え、人類未踏の境地を切り開く。
ボルトは、そして人間は、どこまで速くなれるのか---- 。「僕が言えるのはただ一つ。『すべてが可能』と
いうことだ」。記者会見での決まり文句に、異を唱える者はいない。 (佐藤謙治)