新型インフル「流行期入り」

読売新聞朝刊一面トップ記事と関連記事です。



1週間で11万人 厚労省推計
 厚生労働省は21日、新型インフルエンザについて「流行シーズンに入った」と正式に発表した。
全国約5000医療機関を対象にした国立感染症研究所の定点調査で、最新の1週間(8月10〜16日)の1医療機関
あたりの患者数が1.69人となり、流行開始の目安となる1人を超えたため。この間の推定患者数は全国で
11万人前後に上るという。
 前週(8月3〜9日)の1医療機関あたりの患者数が0.99人と1人に迫ったことを受け、舛添厚労相が19日に
「本格的な流行が始まっている可能性がある」と事実上の「流行宣言」を行ったが、その後の1週間で
患者数が1.7倍に増えた形。推定患者数は前週は6万人前後だった。また、流行の目安となる1人を超えた
のは、前週の6都府県から26都府県に増えた。
 いずれの数値も、新型以外の季節性インフルエンザを含んだものだが、同省では、現在流行しているのは
ほとんどが新型とみている。
 新型による死者はこれまでに3人で、入院した患者数は調査開始の7月28日から8月18日までで計230人に
上っている。入院患者を年代別に見ると、5〜19歳が146人(約63%)で最も多く、5歳未満が35人、20〜39歳が
21人、40〜59歳が10人、60歳以上が18人。入院患者の約8割を未成年が占めており、また、約4割の93人は
持病などがある人だった。
 新型インフルエンザは、持病のある人や妊婦、乳幼児が感染すると、肺炎などを引き起こして重症化
しやすい。同省は来月、重症化しやすい人に情報が適切に伝わるよう、患者団体や保護者団体向けの
説明会を開く。重症化患者を受け入れ可能な集中治療室(ICU)や人工呼吸器の数などについても医療機関
を対象に調査する方針だ。
 インフルエンザウイルスは高温多湿の夏は活動が低下するため、これまで夏に流行することはあまり
なかった。しかし、新型の場合、免疫を持っていない人がほとんどのため夏でも流行しているとみられ、
同省では、秋から冬にかけて一層の警戒が必要とみている。
 季節性の場合、流行のピークは例年11〜1月で、流行入りから5〜10週間でピークを迎えるが、同省は
「新型の今後の展開は予測できない」としている。



新型インフル
 日本政府は21日、新型インフルエンザについて「流行シーズン入り」を正式発表し、ウイルスが活発化
する秋冬に向けて感染拡大が懸念されている。先に真冬を迎えている南半球のブラジル。重症化リスクに
応じて治療の優先順位を決める「トリアージ」(振り分け)などで被害の抑制に努めているが、死者拡大は
食い止められず、ウイルスの手ごわさを示している。(ブラジル南部・ポルトアレグレで 小寺以作、写真も)



ブラジル 真冬に死者急増
 ブラジル南部、南リオグランデ州の洲都ポルトアレグレ。国立「ノッサ・セニョーラ・ダコンセイソン
病院」前には、12畳ほどのコンテナが設置され、4人の看護士が患者に体温計を渡し、問診を行っていた。
 新型インフルエンザの症状に当てはまらない人には自宅安静を勧め、38度以上の熱があるか、風邪の
症状でも妊婦など重症化リスクのある人には隔離病棟で医師の診断を受けるよう助言する。不安を抱える
市民が病院に殺到、院内感染が拡大するのを防ぐのと、重症化リスクの高い人に優先的に治療を受けさせ
るのが狙いだ。「情報を聞きに来るだけの人もいるから」(33歳看護師)でもある。
 こうしたトリアージは多くの病院で導入され、リオデジャネイロでは、テレビで相談電話番号を紹介、
「病院に行く前にまずは電話を」と呼びかけている。
 7月下旬に56人だった死者は18日時点で368人に急増。米国、アルゼンチンに次ぐ世界第3位に。死者は南極
に近いサンパウロなどに集中、南リオグランデ州もアルゼンチン付近から感染が拡大中だ。リオデジャネイロ
州では、公立病院3か所をまわっても、新型インフルエンザと診断されず、死亡した例も発生した。
 人口1億9000万人のブラジルのタミフル備蓄量は19日現在で約880万人分。行政機関からの配布の遅れで、
パラナ州など一部で不足、住民がパラグアイなどに買い出しに出かけているとの報道もある。
 投与基準も揺れた。一時は、検査後、重症患者や重症化リスクが高い患者に限定投与する指針を示して
いたが、今月5日、医師の判断で柔軟に投与する方針に変更。検査結果判明まで3日以上かかるためなどだ。
「ノッサ」病院では外来患者の検査は行わず、高熱や寒気、頭痛などの症状が三つ以上あれば、医師が検査
に頼らずに投与、早期治療で重症化を防ぐ作戦だ。同病院のブレノ・リゲル・サントス感染症部長(55)は、
「症状で判断する方が(タミフルの)治療効果が高い」と説明する。
 企業は通常通りの業務を続けている。だが、南部の多くの地域では、学校での感染を防ぐため、8月上旬
までの冬休みを2週間以上延長した。ただ、子供が人込みを避けて生活するかは家庭次第で効果は不明だ。
行政機関の中には、妊娠中の職員を一定期間休ませたり、窓口業務から外したりする措置を取る所も出ている。



米の患者「推定130万人」



ジュネーブ=平本秀樹]世界保健機関(WHO)によると、新型インフルエンザの死者は13日現在、世界全体で
1799人。北米・中南米が1579人と圧倒的に多く、東南アジア106人、欧州53人、日本を含む西太平洋地域が
50人などと続く。患者数は18万2166人だが、多くの国が、新型かどうかの確認検査をやめているため、現状
を正確には反映していない。
 WHOの進藤奈邦子医務官は、「米国だけで患者が130万人以上との推計もある。全世界の患者数を推計する
のは、大海を泳ぐ魚の数を提示しろというくらい難しい」と、現在の感染拡大状況を表現する。
 進藤医務官によると、アフリカで患者が増えているのは南アフリカで、周辺国への波及は時間の問題という。
中南米ではブラジル北部、コロンビアなどで急増。インドなど北半球でも急増している国は少なくない。
 ワクチンメーカーは、新型用ワクチン製造を進めており、早い国では9月中に接種が始まる見通しだ。
ただ、進藤医務官は「早い段階でワクチンを注文した国でも必要量を受け取れないだろうと予測。
「ほとんどの患者は軽症なので、(呼吸疾患など)ハイリスクの患者に優先的に接種すべきだ」と提言している。






人気ブログ・ランキングへ