平塚八兵衛 昭和事件史の後半を見ました。

ドラマは、吉展ちゃん事件を再捜査するところから始まっていました。
事件当時、容疑者・小原保の実家のある福島でも、二度に亘って聞き込み調査が行われていました。



小原保が、愛人に20万円を渡していたこと、弟に胴巻きにあった30万円ほどのお金を見られていて、
誘拐身代金の50万円に符合することから、状況的には、限りなく犯人と思われていたのですが、犯行
が行われた時には、実家の福島にいたという完全とも思われるアリバイがあったため、起訴には至って
いませんでした。



召集された平塚八兵衛氏は、小原保の年表のような長い供述書を読んで、犯人であることを確信し、
アリバイが本当に成立していたのか、福島での再捜査を願い出ました。このこと事態、過去に担当した
刑事のやり方を批判することに繋がってしまいますが、平塚八兵衛氏にとっては、そんなことは問題
ではなく、自分が納得するまで、とことん調べるタイプの刑事でした。



チャンスを与えられ、同僚の刑事と福島へ行き、2年前のことを尋ね始めました。供述書に書かれていた
実家の蔵で食べた凍り餅は、2年前は米が不作だったために作られていなかったこと、また、5年前から、
蔵には錠前が設置されていたことを聞き出し、供述の嘘を発見しました。また、小原保を目撃したという
老婆が、日付を勘違いしていたことなど、さり気ない日常の会話の中から、事実を引き出して、供述との
差を明らかにしていきました。



小原保の母親を尋ねた帰り際に、追いかけてきた母親から7人兄弟の中で、ただ一人足が悪かったことから、
特に目をかけて育てたが、罪を犯したのなら天罰を下すよう、また、そんな子供を産んだ自分を許して
欲しいと、雨の中、平塚八兵衛氏に、土下座して泣いて謝った場面がありました。



一方、警察にとっては、容疑者の人権擁護というマスコミの声や目があり、小原保の取調べを認めてもら
えたものの10日間に限定されていました。小原保は、自分が予期しなかった取調べに対しては黙秘し、
言い逃れの嘘を考えてから発言するというしたたかさを見せていたようです。



10日間の取調べが過ぎた翌日に、小原保の声を録音し、米国で身代金要求の電話の声と照合するため、
テープレコーダーを回して、世間話を始めたところ、安心しきっていたのか、小原保が、日暮里?で
起きていた大火事を山手線から見ていたことを話しました。事件当日の火事でしたので、小原保は、
東京にいたことを自白したことになりました。



供述書の全てを頭に刻み込んでいた平塚八兵衛氏は、母親から言われた言葉と、その時の様子を伝え、
小原保に残された最後の良心に訴えました。



そして、小原保は、自分がやったと供述しました。



三億円事件は、今も人の記憶に強く残っている大事件です。
この時も、事件の途中から、動員されましたが、時代の流れか、捜査方法が大きく変わり、科学捜査、
組織捜査が主流となり、刑事の勘を口にするような人は、もう誰もいなくなっていました。退官は、
失意の内に、自分の幕を下ろされたのかも知れません。



平塚八兵衛氏は、死刑が執行された小原保の墓参りをするために福島へ行かれました。
案内されたのは、小原家の墓の脇にある小さな土饅頭でした。平塚八兵衛氏は、先祖代々の墓には
入れてもらえなかった小原保の不憫さを偲び、墓に顔を擦り付けて泣き崩れていました。



罪を認め、法によって罰せられたものの、肉親にとっては、未来永劫堪え難い存在として、死後も
許されるものではなかったようです。



数年前、テレビによく出演されていた平塚八兵衛氏を見ましたが、既に亡くなられていました。
主演された渡辺謙さんの顔が、平塚八兵衛氏に重なって見えたのが不思議でした。渡辺謙さんは、
全身全霊で演じられていたようでした。





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