デルタ、アジア便強化 読売新聞の記事です。

成田・羽田拡張にらむ 日航提携交渉
 世界最大の航空会社である米デルタ航空日本航空資本提携交渉に入ったのは、日本の航空市場開放と
成田・羽田空港の拡張を足がかりに成長が期待されるアジア太平洋路線を強化する好機と判断したためだ。
相次ぐ経営統合で世界最大手にのし上がったデルタは次の飛躍をにらんで日航に狙いを定めた。
(ニューヨーク 池松洋)
1924年に空中農薬散布会社として発足したデルタは国内の航空会社との買収・合併を繰り返して成長を続けた。
91年にはパンアメリカン航空(当時)の大西洋・欧州路線を買収し、国際線を大幅に強化。2008年10月にノース
エスト航空との合併で旅客輸送力で世界最大の航空会社となった。今年7月にはオーストラリアへの路線を
開設、現地の航空会社との提携計画を打ち出すなど拡大路線を続けている。
 デルタはノースウエストとの合併で懸案だった日本を軸とするアジア太平洋路線を充実させた。日米路線は
週約145便と日米間の総計(約440便)の3分の1を占める最大手だ。日航(週94便)を陣営に加えれば週239便。
日米間で過半数の便数を押さえることになる。
 デルタが日航に関心を示したのは、国際間で航空市場を開放する「オープンスカイ(航空自由化)」政策が
日米間で実現する可能性が高まったためだ。
 国際線の発着枠や路線、便数などは2国間の航空協定で決められる。オープンスカイが導入されれば、航空
会社は需要に応じて柔軟な路線開設が可能になる。政権公約でオープンスカイ推進を盛り込んだ民主党
新政権が発足すれば、航空自由化路線がさらに加速すると判断したと見られる。
 日航は米アメリカン航空全日空がユナイテッドとそれぞれ同じ航空連合を組んでいる現状では、デルタが
路線調整や販売競争で不利になりかねない。11日までワシントンで開かれた日米航空協議で、オープンスカイ
と10年の成田・羽田の増便が協議されており、「デルタは日航を自陣営に引き込んで有利な地位を獲得する
ことを急いでいる」(米アナリスト)との見方が広がった。
 米国内線は需要減少と過当競争で利益確保が難しい情勢だ。約4000キロ離れたニューヨークと西海岸の路線
でも片道100?程度で販売されている。収益が見込める国際線の強化は米航空会社にとって避けて通れない
経営課題だ。
 デルタはノースウエストとの合併後も赤字が続いている。しかし手持ち資金は50億?(約4500億円)程度と
され、日航への出資額とされる500億円程度を確保する余力はあると見られている。
 一方、デルタの攻勢で日航と同じ航空連合「ワンワールド」に加盟する世界2位のアメリカンの反応が注目
される。ワンワールドの中核である日航がデルタ陣営に移れば、昨年のデルタ・ノースウエストの合併で世界
最大手の地位を滑り落ちたアメリカンは海外事業でさらに不利な立場になりかねない。このため「アメリカン
日航に出資など提携強化策を持ちかける可能性がある」(アナリスト)との観測も浮上している。



500億円出資を打診
 日本航空は12日、米デルタ航空との資本・業務提携に向け、副社長ら幹部を米国に派遣して詰めの交渉に
入った。日航はデルタから500億円前後の出資を打診されているとみられる。合意に至れば、燃料効率の良い
新型機材への投資余力が生まれるほか、デルタとの共同運航開始で国際線の不採算路線の削減が可能となる。
事業規模の10%削減などとともに、月内にも策定する経営改善計画の内容がほぼ固まることになる。
 デルタの出資額が500億円規模で決着した場合、出資比率は11%前後で筆頭株主になる見通しだ。日航
エールフランスーKLMなど他の海外大手から数十億円規模の出資を受けることも視野に入れていると見られる。
日航は今年6月に続いて12月にも約1000億円の追加融資が必要とされているが、今回の提携が実現すれば資金
繰りは大きく改善する。
 一方、日航と共同運航を行っているアメリカン航空がデルタとの交渉に不快感を示すのは必至で、今後の
提携関係に影響を与えると見られる。
 経営改善計画には不採算路線を中心に国際・国内線の大幅な減便・削減が盛り込まれる見通し。全額出資
子会社でリゾート路線中心のジャルウェイズの株式を一部売却することなども検討している。OBも含めた
企業年金の給付削減や事業規模の10%削減などのリストラ策は、デルタとの交渉にかかわりなく引き続き
検討されているも模様だ。
 日航はデルタやエールフランスなど日米欧を機軸とした幅広い地域での共同運航を展開することで航空
ネットワークを維持し、将来の旅客需要の回復期には収益拡大につなげる考えだ。







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