チリでM8.8 死者122人 東京新聞の記事です。

建物損壊、通信も寸断
[ニューヨーク=加藤美喜]米地質調査所(USGS)によると、南米チリで二十七日午前三時三十四分
(日本時間午後三時三十四分)、マグニチュード(M)8.8の大地震が発生した。震源地は同国中部の
コンセプシオンの北北東一一五?付近で、震源の深さは三五?。ロイター通信によると、チリの
ピニェラ次期大統領は地震の死者数は百二十二人になったと述べた。



写真: 27日、チリの首都サンティアゴで、大地震のため崩壊した高速道路の
    一部とともに落下してひっくり返った乗用車=ロイター


 
 米ハワイの太平洋津波警報センターはチリやペルー、オーストラリア、日本、フィリピンなど
太平洋岸諸国一帯に津波警報を発令した。
 AP通信によると、バチェレ大統領はチリ中部に「激甚災害」を宣言。一方で「各機関は機能して
いる」とし、国民に冷静な行動を呼び掛けた。
 ロイター通信によると、同国中部の広い地域で電話や電気が寸断されている。
震源地から三百二十五?離れた首都サンティアゴでは歴史地区で複数の建物が損壊したほか、橋が
崩壊するなどの被害が出た。
 首都の空港は閉鎖された。首都では建物から避難した人々が通りにあふれ、抱き合ったり泣き
ながら助けを求めているという。サンティアゴの南にある都市クリコでも複数の建物が崩壊した。
 USGSによると、その後少なくとも十回以上のM5級の余震が続いた。 ロイター通信によると、
地震国チリでは、一九六〇年五月に発生したM 9.5の地震で一千六百五十五人が死亡。発生した津波
が北海道や三陸沿岸を襲い、全国で死者・行方不明者が百四十二人に達したほか、ハワイでも死者が
出た。



在留邦人31人連絡取れず コンセプシオン
 在チリ日本大使館によると、二十七日午前(日本時間同日深夜)時点で、震源地に近いコンセプシオン
の在留邦人三十八のうち三十一人と連絡が取れていないという。(共同)



日本も午後 津波の恐れ
 二十七日のチリ中部沿岸の地震で、気象庁は日本に津波が到達する場合、早い所で二十八日午後
一時すぎになるとの見通しを示した。津波の高さは、計算上は津波警報発表基準の一?になるか
ならないか程度と推定されるが、最終的には太平洋各地の検潮所での実際のデータを見ながら判断
するとしている。
 津波警報か注意報を出す場合、対象は日本の太平洋岸全域になる見通し。「大津波(三?以上)は
考えていない」(同庁)という。
 一般住民のいない日本最東端の南鳥島を除き、津波が最も早く到達するとみられるのは小笠原諸島
の父島(東京都)で、二十八日午後一時すぎ。同一時半ごろ北海道東岸に達し、三陸沖から房総半島
など関東の沿岸部にかけては同二時ごろ、東海地方の沿岸部から紀伊半島にかけては同二時半前後に
なりそう。



チリ地震 新政権船出に試練 復興資金膨らめば打撃
[ニューヨーク支局] 大地震に見舞われた南米チリでは、今年一月の大統領選決選投票で、ピノチェト
軍政(一九七三〜九〇)終結以来、二十年続いた左派政権に終止符が打たれ、三月十一日に次期大統領
就任が予定される政権交代期の真っ只中。当選した中道右派で富豪のピニェラ元上院議員は、長期左派
政権に巣くった汚職体質の打破など政府の効率性向上を公約としているが、船出から地震への対応と
いう大きな試練に直面する。
 バチェレ現大統領は地震発生後の二十七日早朝(日本時間同日夜)、地元メディアを通じ「警察や
病院は機能している」と述べ、国民に冷静な対応を呼び掛けた。ただ、現地からの報道では、震源から
約三百?離れた首都サンティアゴでも、複数のビル倒壊などが伝えられており、全土で広範囲にインフ
が破壊された可能性が高い。復興への財政支出が膨らめば、年率6%の経済成長を掲げるピニェラ氏の
次期政権運営にも影響が出かねない。
 一方、チリは一九六〇年に観測史上最大となるマグニチュード(M)9.5の地震が発生するなど過去にも
たびたび大地震に見舞われ、地震国として復旧対応などの経験は豊富だ。一月に大地震に見舞われた
西半球の最貧国、中米ハイチのような混乱に陥ることはないとみられる。
 チリは軍政終結以降、南米地域の中では政治的、経済的に最も安定した国のひとつ。近年は、世界一
の埋蔵量を誇る銅など鉱物資源輸出が国際的に注目を集め、日本も主要な輸入国となっている。



15階建てビル全壊 チリ地震 火災、増える死者「この世の終わりか...」
 南米チリを襲ったマグニチュード(M)8.8の大地震震源地から遠く離れた首都サンティアゴでも
大きな被害が発生し、混乱が続いた。五十年前のチリ沖地震では、日本にも津波が押し寄せ、宮城県
などで多数の死者が出た。津波が本当に来るのか。悲劇の再来を心配する住民らが、不安を口にした。



写真: 巨大地震に襲われたチリ中部のコンセプシオンで、炎上する建物の
    テレビ映像=27日 (ロイター)



[ニューヨーク=加藤美喜]「十五階建てのビルが完全に倒壊した」。二十七日未明、チリ中部を
襲ったM 8.8の地震で、震源に最も近いチリ第二の都市コンセプシオンからリポーターが興奮して
伝えた。暗闇の中、サイレンが響き、毛布にくるまった寝間着姿の人々が通りをぼうぜんとした
表情で行き交った。けが人は次々と担架で運び出され、チリ各地の死者数は刻々と増え続けた。
「この世の終わりか」と悲痛な声が上がった。
 地元テレビ局がコンセプシオンのリポーターと電話で連絡を取れたのは地震発生から六時間後。
地震の直後から市外への電話はまったく通じなくなったという。「女性や子どもの叫び声が響き
渡った」。リポーターは興奮気味に発生直後の混乱を伝えた。街では、多くの建物が倒れた。
築約二年という十五階建てのビルは完全に倒壊し、三階ほどの高さにつぶれていた。
 地元テレビの映像では、商業ビルの看板や壁が軒並み崩れ落ち、落ちてきたコンクリート
路上の車がぺしゃんこに。一部で火災も発生し、闇夜を真っ赤に染めた。コンセプシオン大学の
化学関連の学部の建物からも出火したもようだ。
 国営テレビのアナウンサーは「がれきのない通りはない」と悲愴感を漂わせ伝えた。
 太平洋岸のリゾート地ビニャデルマルでは、恒例の国際音楽祭で多くの外国人観光客が滞在。
地震当時、ディスコにいた男性は地元ラジオに「人々は叫び、逃げ惑い、中には腰が抜けて動け
ない人もいた。ひどい状況だった」と話した。
 首都から三百?以上離れた首都サンティアゴでも、高速道路の高架部分が崩壊。夜が明け、複数
の車があおむけにひっくり返った様子がテレビに映し出された。AP通信によると、首都の近代的な
ビルの多くは耐震構造となっているが、旧市街は古い建物が多く、歴史的な教会の鐘楼が倒壊する
などの被害が出ている。



波が収束し大きく 平田直・東京大地震研究所教授の話
 日本で大きな津波被害が出た一九六〇年のチリ大地震と同様、日本で揺れがないからといって
油断してはいけない。日本とチリは、丸い地球の反対側に位置しているため、チリの津波が日本に
到達するころには、いろんな波が集束し、大きな津波になる恐れもあるからだ。六〇年のものと
比べて地震エネルギーが小さいといっても、被害状況などは簡単に予想すべきではない。日本に
到達する津波が実際に何?になるかは気象庁が計算中だろうが、津波はたとえ三〇?でも恐ろしい
ということを肝に銘じるべきだ。



外務省や旅行会社 現地情報収集急ぐ
 南米チリの地震を受けて、外務省や国内の旅行会社は二十七日、現地の情報収集や日本人の安全
確認に追われた。
 外務省海外邦人安全課によると、二〇〇八年十月時点で在留届が出ていた日本人はチリ全土で
千百七十人。同課は在チリ大使館などを通じ、現地に滞在している日本人の安否確認を進めて
いるが、午後七時現在で被害は確認していない。大使館の建物には大きな被害はなく大使館の職員や
家族は無事だという。
 日本国内の旅行各社も現地の様子などの確認作業を進めた。チリ本土向けのツアーを扱う旅行社は
少ないが、一部の旅行社がモアイ像で知られるチリ領イースター島へのツアーを扱っているという。
 イースター島へのツアーを扱うエイチ・アイ・エス(HIS、東京)には、申込者から「大丈夫か」と
問い合わせが数件あった。



50年前、日本でも津波被害
 二十七日のチリ中部沿岸の地震は、東海、東南海、南海地震と同様、海溝沿いにマグニチュード
(M)8以上の巨大地震が繰り返し発生する“地震の巣”で起きた。
 気象庁によると、今回の震源に近いチリの太平洋岸には、南北にチリ海溝が走り、海溝は二枚の
プレート(地表を覆う厚い岩板)がぶつかる境界に当たる。南米大陸を載せた南米プレートの下に、
海側のナスカプレートが東へ沈み込み、ひずみをため込んでは大地震とともにひずみを解放している。
 今回の地震のメカニズムは、東西から圧縮する力が加わり、陸側のプレートが跳ね上がる「逆断層
型」。日本に津波が押し寄せて百四十二人の犠牲者を出した一九六〇年の地震(M9.5=世界で観測史上
最大)も、この海溝沿いの今回より南側の領域で発生し、同じメカニズムだった。
 チリ海溝の北端付近、チリの北隣のペルー沖でも、二〇〇一年六月にM8.4の巨大地震が起きている。
 津波は時速七二〇?(水深四?の場合)とジェット機並みのスピードで伝わり、今回の震源からだと
日本到達まで一日弱かかる。過去の経験から、日本に届く津波の規模は途中ハワイで観測される津波
の半分程度になることが多いが、気象庁では「あくまで目安で、個々の地震によっても異なる」として
いる。








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