JICA’s World 9月号「中南米特集」の紹介です。

特集 中南米と日本のきずな 実る成果−広がる関係



知られざる交流の軌跡

戦後から60余年の間、移住や貿易の拡大に伴い、結び付きを強めていった日本と

中南米地域。その始まりは今から約400年前。千葉県御宿沖で遭難したメキシコ

船籍の一行を江戸幕府が救出したことにまでさかのぼる。以降、途中で太平洋

戦争による断交を経験しながらも、連綿と関係を築いてきた。その交流や協力の

歴史を見てみよう。



1873年 [ペルーと国交樹立]

明治維新から5年後のこの年、日本が国交を結んだ中南米最初の国が、ペルー。

中国人労働者が乗船していたペルー船籍「マリア・ルス号」が横浜港に寄港し

た際、奴隷的な扱いを受けていた中国人の解放をめぐり争ったことがきっかけ

となった。

1888年 [メキシコと平等条約を締結]

幕末から維新への激動の時代、欧米列強から不平等条約を結ばされていた日本に

とって、アジア諸国以外で初の“平等な条約”(日墨修好通商条約)を結んだのが

メキシコ。この翌年にはアメリカとの条約改正が実現するなど、不平等条約改正

に向けた原動力となった。(写真)陸奥宗光署名・日墨修好通商条約批准書

1893年 [日本人の移住が始まる]

日本がまだ貧しかった時代、海外での成功を夢見て、多くの若者が海を越えた。

中南米地域への初の集団移住先となったのは、1897年のメキシコ。その後、1899

年にペルー、1908年にブラジルへと渡った日本人。現在、海外の移住者・日系人

約290万人(推定)のうち半数以上が中南米諸国で暮らしている。(写真)1908年、

781人の移住者を乗せ、ブラジルのイキサントス港に着岸した最初の移民船

「笠戸丸」

1894年/1904年 [チリ/アルゼンチンが巡洋艦を譲渡]

日清戦争日露戦争が始まり、海軍力の増強を急いでいた日本に、新鋭の巡洋艦

を譲渡してくれた両国。「和泉」「日進」「春日」と命名されたこの3隻は、敵

艦隊の攻撃から主力艦を守るなど、日露戦争日本海海戦で活躍した。

(写真)日露戦争開戦の前夜にアルゼンチンから譲り受けた「春日」

1918年 [野口英世博士の黄熱病研究]

アフリカでの黄熱病研究でよく知られる野口英世博士。しかしそれ以前、黄熱病

が大流行していたエクアドルのほかメキシコ、ペルー、ジャマイカ、ブラジル

など、中南米諸国でも研究を行った。エクアドルでは、ワクチン開発に向けた

研究の功績を称え、首都キトには博士の銅像が建てられ、「野口英世通り」と

いう名の通りもある。

1952年 [移住再開−日系人の活躍]

国策による日本人のブラジル渡航を皮切りに、戦後再開された中南米諸国への

移住。パラグアイ、アルゼンチン、ボリビアドミニカ共和国など、戦後の移住

者は約26万人に上る。その後、移住者・日系人は、各国の経済、社会の発展、

日本との友好・協力関係に大きく貢献。(写真)入植地で日系人が成功を収めた

ジュート栽培は、その後ブラジル・アマゾン地域の主産業になった。

1956年 [日本の国際社会復帰を後押し]

第二次世界大戦に伴い、国交が途絶えた日本と中南米諸国。しかし、戦後、対日

平和条約に調印した中南米20ヵ国と国交が回復、外交関係も深まっていった。

1956年、日本の国連加盟の際は、中南米地域の多数の国が賛成票を投じ、国際

社会復帰を後押しした。

1960〜70年 [産業の発展を支援]

高度経済成長期にあった日本は、中南米諸国で競争力のある産業育成に向けた

協力をスタート。日伯合同プロジェクトとして1962年に操業を開始し、その後の

日伯企業連携の先駆けとなった「ウジミナス製鉄所」は、ブラジル鉄鋼業界の

発展に貢献した。また、不毛だったセラードの大地を肥沃化し、ブラジルを農業

大国に押し上げたのが、1979年に始まった「日伯セラード農業開発協力事業」。

22年に及ぶ協力により、大豆をはじめとした農業生産量は飛躍的に増加し、日本

そして、世界の食料事情をも大きく変えることとなった。そして、私たちの食卓

にも並ぶサケ。その輸入量の約半数はチリ産だが、本来サケがいなかったチリに

養殖が普及した背景には日本の協力があった。

(写真)ブラジル鉄鋼業界の発展に貢献したウジミナス製鉄所

Column 横浜で海外移住の歴史を学ぼう

100年以上の歴史がある日本人の海外移住。JICA横浜に併設された「海外移住資

料館」では、その軌跡と移住者・日系人の姿を、写真・映像、再現模型、文献

など貴重な資料をもとに分かりやすく紹介している。最大の移住先となったのが

中南米諸国。今も約163万人(推定)の移住者・日系人がこの地域に暮らしてい

る。戦後、主に中南米への移住事業を担ってきたJICA。現在も、日本での研修や

JICAボランティアの派遣を通じて日系社会の人材育成などを支援している。



「海外移住資料館」

開館時間:10:00〜18:00 (入館は17:30まで、月曜・年末年始休館)

交通案内:みなとみらい線みなとみらい駅馬車道駅から徒歩10分

問:JICA横浜 海外移住資料館

TEL: 045−663-3257 URL: www.jomm.jp/




 

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