JICA’s World 9月号「中南米特集」紹介の続きです。

特集 中南米と日本のきずな 実る成果−広がる関係



支え合う中南米と日本

豊富な天然資源と肥沃な大地からの恵みに支えられ、安定した発展を続ける中南

米地域。地球の反対側に位置し、日本からははるか遠い地域だが、貿易の拡大な

どにより、経済的なつながりは深まっている。日本にとっても重要なこの中南米

地域の持続的な成長を目指し、現在、JICAの協力が進められている。



経済成長の影に潜む課題

民主化が進展し、安定した経済成長を続けている中南米地域。33ヵ国からなる

この地域の人口(2008年、以下同じ)は5億6600万人。近年の経済成長率は2.5%

(コロンビア、エルサルバドル)〜9.8%(ペルー)と高く、域内総生産は5年前の

倍に当たる4兆2160万ドル、ASEAN(東南アジア諸国連合)の3倍近い規模だ。



こうした経済成長を支えているのは、この地域に豊富に存在する「天然資源」や

「肥沃な大地」。石油や鉄鉱石、レアメタルといった鉱物資源から、大豆をはじ

め、小麦やトウモロコシなどの食料まで、中南米地域は経済活動に不可欠な資源

の宝庫だ。特に人口増加や中国をはじめとする新興国の成長を背景に、こうした

“資源の供給地”としての重要性がますます高まっている。



今でこそ、安定した成長を遂げている中南米諸国だが、振り返ってみると、

失われた10年」と称された1980年代、この地域は累積債務が肥大化し深刻な

不況に陥った。しかし、90年以降、多くの国が自由経済路線に切り替え次第に

回復に向かうと、安定した成長が続いた。08年末の世界金融危機によって経済

成長は鈍化・停滞したが、それから2年余りが経過した現在は、輸出や国内消費

の伸びに後押しされ、今後の成長も期待されている。



こうした好調な経済にあって、中南米が抱える課題も多い。

ブラジルやアルゼンチン、メキシコなど所得水準が比較的高い国が増えた一方

で、ハイチなど一人当たりGNI(国民総所得)が1000ドルに満たない貧しい国も

あり、域内格差は広がっている。また、各国内では都市と農村の地域間格差

農村・山岳部の貧困、貧困に起因した麻薬犯罪・テロといった問題が横たわる。



さらに、一次産品の生産と輸出に大きく依存する南米諸国の経済は、世界経済や

市場の動向に左右されやすい。気候変動や環境破壊などにより、アマゾンの広大

熱帯雨林をはじめとする豊かな自然や生態系が驚異的なスピードで失われて

いることも深刻な課題だ。



広がる関係

こうした課題に対し、現在JICAは、「人間の安全保障の視点を踏まえた貧困層

支援」「持続的経済成長に向けた基盤整備」「気候変動対策、環境保全・改善」

を柱に支援を行っている。経済成長に伴い、各国自身の開発に対する取り組みは

進展しているものの、いまだ貧富の格差や貧困、環境・気候変動問題が深刻な

状況にある国が多いからだ。



また、人口・国土・GDP(国内総生産)などが小規模な国が多い中米地域では、

共通の開発課題に対し地域単位で支援する「広域協力」を、歴史的な結び付きが

強い南米では、産業育成や貿易振興、投資環境整備などを通じた「さらなる関係

強化」を推進。協力分野は、教育、保健医療、防災・緊急支援、企業支援・イン

フラ整備、環境・気候変動、三角関係など幅広い。



中南米地域の持続的な成長を後押しすることは、日本にとっても重要だ。

例えば、鉄鉱石や銅などの鉱物資源、石油といったエネルギー資源、大豆や肉・

魚介類などなど食卓に欠かせない食料・・・。私たちが生きる上で不可欠なこれら

多くのものが中南米地域から輸入されており、この地域が私たちの暮らしを支え

ていると言っても過言ではない。他方で、数多くの工業製品を中南米地域に

輸出、日系企業の進出数も年々伸びており、今後ますます相互の結び付きが強く

なるものとみられる。



移住者や日系人の功績、長年の協力実績などを背景に、日本に厚い信頼と期待を

寄せる中南米諸国。今まさに、この地域との関係強化、安定・発展に向けたさら

なる貢献が求められている。



中南米支援の特長「三角協力」

「三角協力」は、ある途上国が別の途上国に対して行う国際協力(「南南協力」)

を先進国が技術・資金・人材面でサポートすること。文化や言葉、気候など共通

点が多い途上国同士の協力は、その国にふさわしい“適正技術が移転”される

ことから、日本など先進国にとってはより効率的な支援が可能となる。

メキシコ、ブラジル、チリ、アルゼンチンなど、中南米諸国の中には長年に

わたる日本の協力の実績が実を結び、より貧困度の高い周辺国への協力を始めた

国もある。そこでJICAは、中南米地域の支援方法の一つとして、こうした国々と

パートナーシップを結び、「三角協力」を推進している。

近年は、「日伯パートナーシップ」のようにアフリカへの三角協力を展開する

など、地域を超えた取り組みも生まれている。



進む域内経済統合(2010年8月現在)

域内経済統合の進展とともに、中南米諸国は域内の共通課題に対する取り組みも

強化している。



NAFTA 北米自由貿易協定  アメリカ、カナダ、メキシコ

SICA 中米統合機構    コスタリカエルサルバドルグアテマラ

             ホンジュラスニカラグアパナマベリーズ

CARICOM カリブ共同体 アンティグア・バーブーダバハマ、バルバドス、

             ベリーズドミニカ国グレナダガイアナ

             ハイチ、ジャマイカ、セント・クリストファーネー

             ヴィス、セントルシア、セントビンセント、
 
             スリナム、トリニダッド・トバゴ

MERCOSUR 南米南部共同市場 アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ

               ウルグアイ

CAN アンデス共同体 ボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルー








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